ゲノム創薬フォーラム設立趣旨  
 生命のプログラムともいえるヒトゲノムの塩基配列のすべてが、21世紀初頭までに解読されようとしている。米国TIGR社やWellcome Trust社などの動きを見ると、2002年までにはヒトの全遺伝子の配列が明らかにされそうな勢いである。ヒトのみならず、100余種の生物のゲノムも解析されつつあり、ヒトを含む多数の生物種の間での遺伝子配列の近縁関係が明らかにされる日も近い。.得られている情報と科学は塩基配列というゲノムの構造に関するもの(structural genomics)だけではなく、個々の遺伝子の機能に関する情報と科学(functional genomics)も質的・量的に着実な拡大を示すに至っている。世界中のゲノム情報は驚異的な速度で蓄積しつつある。膨大な情報を前にして、それらを整理し、組織し、統合し、活用する科学、生物情報(bioinformatics) が生まれるのは当然である。これらはゲノム科学(genomics)と総称される。
 ここでわたくしたちは、眼をゲノム科学の目的の面に転じよう。医薬品を作り出す創薬という作業は、これまで一定の目的を定め、多数の化合物や天然物をスクリーニングすることで行われてきた。例えば、新しい受容体を誰かが発見すれば、それを創薬研究者たちは競って標的とした。現在も有効なこのアプローチを続けるうち、優れた医薬品を発見するためには、まず標的自身が新しく、ユニークでなければならないことを私たちは知った。これを可能にする創薬における画期的変化がゲノム科学をベースにした標的の発見とそのダイナミックな活用であった。これをゲノム創薬研究プロセス(Genomic Drug Discovery Process) と呼ぼう。

科学としてのゲノム創薬科学の誕生である。科学の一分科と別の分科の境界を「学際」と呼ぶなら、これは科学の融合、「学融」による新しい科学の誕生である。
 ゲノムを創薬に結びつける動きは、アカデミアを巻きこんで欧米の製薬企業やベンチャーの間で著しい。日本ではどうであろうか。一部で志ある研究機関と企業に成功の兆しはあるものの、ゲノム創薬科学がわが国の医薬品開発において根付いたとは言い難い。とりわけ遅れているのは、医薬品開発に有効な大規模かつ組織的なヒトゲノム情報データベースの構築とbioinformaticsを駆使した遺伝子情報の解析である。企業によるヒトゲノム情報の活用も、大勢としては、欧米の諸国に比し、未熟である。  このような状況のなかで『ゲノム創薬フォーラム』は、創薬研究プロセス全般にわたり、何をどのようになすべきかをともに考え、各企業において最新のゲノム科学を取り込んだ創薬研究を強力に支援するためのシステム作り、ひいては日本におけるゲノム創薬科学の定着と発展に寄与できることを目標としたい。企業、アカデミアからの多数の参加を期待する。

ゲノム創薬フォーラム発起人代表:野口 照久
発起人副代表
新井賢一、大石道夫、大野雅二、
榊 佳之、 廣部雅昭、藤野雅彦

 

   
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